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“破壊されるのは私みたいな子供”シャーロッテ・アルデブロン
“英国から見える残虐”高野孝子
“イラクのカトリック尼僧によるブッシュ大統領とアメリカ国民への手紙 ”
“マイケル・ムーアからブッシュへの公開書簡”マイケル・ムーア
“ アメリカ政府は血に飢えた野獣”ハロルド・ピンター




































「破壊されるのは私みたいな子供」
13歳のアメリカ人少女、シャーロッテ・アルデブロンが
メイン州の平和集会で反戦スピーチ

 アメリカ人がイラクに爆弾を落とすことを考えるとき、頭の中で想像するのは軍 服を着たサダム・フセインとか、銃をもった黒い口ひげの兵隊とか、バグダッド のアルラシード・ホテルの玄関フロアに「罪人」と説明つきで描かれた父ブッシ ュ大統領のモザイク画とかでしょう。

 でも、知っていますか? イラクに住む2400万人の人たちのうち半分以上は 15歳以下の子どもなんです。1200万人の子どもですよ。私と同じような子 どもたちです。私はもうすぐ13歳ですけど、もっと大きい子たちや、もっとず っと小さい子たちがいて、女の子ではなくて男の子もいるし、髪の毛は赤毛じゃ なくて茶色だったりするでしょう。でも、みんな私とちっとも変わらない子ども たちです。
 ですからみなさん、私をよ〜く見てください。イラク爆撃のことを考えるときは、 頭の中で私のことを思い描いてほしいからです。みなさんが戦争で殺すのは私な んです。

 もし運がよければ、私は一瞬で死ぬでしょう。
1991年2月16日にバグダッ ドの防空壕で、アメリカの「スマート」爆弾によって虐殺された300人の子ど もたちのように。防空壕は猛烈な火の海になって、その子どもたちやお母さんた ちの影が壁に焼きつきました。いまでも石壁から黒い皮膚を剥ぎ取って、お土産 にできるそうです。
 けれども、私は運悪くもっとゆっくり死ぬかもしれません。
たったいまバグダッ ドの子ども病院の「死の病棟」にいる、14歳のアリ・ファイサルのように。 湾岸戦争のミサイルに使われた【劣化ウラン】のせいで、彼は不治の白血病にか かっています
 さもなければ、生後18か月のムスタファのように、内臓をサシチョウバエの寄 生虫に食い荒らされて、苦しい不必要な死を迎えるかもしれません。信じられないかもしれませんが、ムスタファはたった25ドル分の薬があれば完 治するのです。でも、みなさんが押しつけている経済制裁のためにその薬があり ません
 さもなければ、私は死なずに何年も生きるかもしれません
サルマン・モハメド のように、外からではわからない心理学的打撃を抱えて……。彼はいまでも、ア メリカが1991年にバグダッドを爆撃したとき、幼い妹たちと経験した恐怖が 忘れられないのです。サルマンのお父さんは、生きのびるにしても死ぬにしても 同じ運命をと、家族全員を一つの部屋に寝かせました。サルマンはいまでも、空 襲のサイレンの悪夢にうなされます。
 さもなければ、3歳のとき湾岸戦争でお父さんをアメリカに殺されたアリのよう に、私は孤児(みなしご)になるかもしれません。アリは3年のあいだ毎日、お 父さんのお墓の土を手でかき分けては、こう呼びかけていたそうです。 「だいじょうぶだよ、パパ。もうパパをここに入れたやつらはいなくなったから」 と。でもそれはちがったみたいね、アリ。そいつらはまた攻めていくらしいもの。
 さもなければ、私はルエイ・マジェッドのように無事でいられるかもしれません。 彼にとっては、学校へ行かなくてよくなり、夜いつまでも起きていられるのが湾 岸戦争でした。でも、教育を受けそこなったルエイは、いま路上で新聞を売るそ の日暮らしの身の上です。

 みなさんの子どもや姪や甥が、こんな目にあうのを想像してみてください。体が 痛くて泣き叫ぶ息子に、何も楽になることをしてやれない自分を想像してみてく ださい。崩れた建物の瓦礫の下から娘が助けを求めて叫ぶのに、手がとどかない 自分を想像してみてください。子どもたちの目の前で死んでしまい、そのあと彼 らがお腹をすかせ、独りぼっちで路上をさまようのを、あの世から見守るしかな い自分を想像してみてください。
 これは冒険映画や空想物語やビデオゲームじゃありません。イラクの子どもたち の現実です。

 最近、国際的な研究グループがイラクへ出かけ、近づく戦争の可能 性によってイラクの子どもたちがどんな影響を受けているかを調べました。話を 聞いた子どもたちの半分は、もうこれ以上生きている意味がないと答えました。 ほんとに小さな子たちでも戦争のことを知っていて、不安がっているそうです。
 5歳のアセムは戦争について、「鉄砲と爆弾で空が冷たくなったり熱くなったり して、ぼくたちものすごく焼け焦げちゃうんだ」と語りました。
 10歳のアエサ ルは、ブッシュ大統領にこう伝えてほしいと言いました。「イラクの子どもが大 勢死にます。あなたはそれをテレビで見て後悔するでしょう。」

 小学校のとき、友だちとの問題は叩いたり悪口を言い合ったりするのではなく、 相手の身になって話し合うことで解決しましょうと教わりました。相手の行動に よって自分がどう感じるかをその子に理解してもらうことで、その行動をやめさ せるというやり方です。
 ここで、みなさんにも同じことをお願いします。ただし、この場合の“相手”と は、いま何かひどいことが起ころうとしているのを待つしかないイラクの子ども たち全部です。ものごとを決められないのに、結果はすべてかぶらなければなら ない世界中の子どもたちです。声が小さすぎたり遠すぎたりして、耳をかしても らえない人たちのことです。 そういう“相手”の身になれば、もう一日生きられるかどうかわからないのは恐 ろしいことです。 ほかの人たちが自分を殺したり、傷つけたり、自分の未来を奪ったりしたがった ら、腹が立つものです。 ママとパパが明日もいてくれることだけが望みだなんて、悲しいです。
 そして最後に、自分がどんな悪いことをしたのかも知らないので、何がなんだか わかりません。

(翻訳:星川 淳)
シャーロッテ・アルデブロンは、メイン州のプレスクアイルでカニングハム中学校に通う13歳。彼女への感想は、お母さんのジリアン・アルデブロンまで。
英国から見える残虐
高野孝子

 3月23日、英国の新聞の一面の写真。見下ろしている二人の英国兵士の顔がこわばっている。何を見ているのかと、上下二つ折りになっていた新聞を広げた。兵士の足下には長さ二メートル足らずのざんごうが掘られ、そこに二人のイラク兵士の遺体があった。ヘリコプターからの激しい銃撃を受け、二人とも首から上はすでにない。薄茶色をした辺りの土に脳みそと思われる赤い塊がへばりついている。体がようやく入るような細長い穴の中で二人の体はつぶれていた。遺体の一つと塹壕の土壁の間には、降伏の意志を示す白い旗が直立し、音なき二人の男性の最後の意図を伝えていた。

 「銃の照準を合わせた先が一人の血の通った人間で、親も子どももいるということを考えないんですか」とテレビのインタビュー。兵士が答えた。「銃を向けたらそれは標的。人間だと思いません」

 別の新聞の一面には泣き叫ぶ幼児の写真があった。ピンクのかわいらしい上着に包まれているが、柔らかそうな右腕は三角巾で首からつるされ、顔の右半分が耳まで焼けただれ腫れていた。抱きかかえている母親の表情はわからない。たった今見たばかりのテレビの映像では、足先からあごまで重度の火傷を負い病院のベッドで叫んでいる赤ん坊を写していた。大人が数名、懸命に体中に薬を塗ろうとしている。このぼうやは明日には生きてはいない。他にもぼうぜんとした表情の5歳の少女。家の近くで爆発したミサイルの破片が家の窓や壁を突き破って小さな足に突き刺さった。それはせきづいにまで到達し、彼女の左足は二度と動くことはない。頭から体から血が流れ全身血まみれのまま、痛みに耐えながら目も開けられずにうつむいて座っている老人。頭の後ろ半分を吹き飛ばされた少年の映像・・・。

 「戦争の本当の姿は軍事的勝利でも敗退でもない。ましてアメリカとイギリス、少数のオーストラリア軍だけが行っている侵略行為を連合軍と呼ぶうその中にもない。たとえ国際政治で認められた戦いであったとしても、結局実際の姿はひどい苦しみなのだ」と長く紛争現場から報道しているジャーナリスト、ロバート・フィスクが3月23日付けのインデペンデント紙に書いている。

 私が暮らす英国は、国民の多くが反対や疑問を表明する中、政治家たちの判断でアメリカと共にイラクに武力攻撃を開始した。3月上旬には英国民の8割が、国連決議がない戦争は指示しないとしていたが、数日前のさまざまな調査では声はほぼ半分に割れている。「戦争は始まってしまった。英国の兵士たちが命がけで戦うのをサポートしないわけにはいかない」という声が多い。もちろんブレアの議論に納得し賛同している人たちも少なくない。英国からは4万5千人の兵士がこの戦争のために派遣された。18歳になったばかりの青年を始め圧倒的に若い人たちが多い。バグダットを空爆し続けているB52もイギリスから出ていく。イラクの人たちは、B52が飛び立ったというニュースをアラブの放送局アルジェジーラで聞き、それから6時間後の空爆を計算する。自分たちの頭上に爆弾が落とされるかもしれない恐怖の中に彼らは今暮らしている。

 バグダッドに住む17歳の少女の日記が新聞に載っていた。部屋の壁にはディカプリオの写真や楽しげなカードが張ってある。映画や音楽の話が好きな、隣にでも住んでいそうな当たり前の少女だ。もうじき英語の試験だ、いい成績を取らないと、と彼女は心配している。親友が家族ごとダマスカスへ非難するというので抱きあって別れを泣いた。二度と会えないかもしれない。「ブレアとブッシュはどうしてこんなことをするの、私たちが彼らに何をしたの?私たちは平和が欲しい。戦争ではない」。掲載されていた日記の最後の22日にはこう書いてあった。「今日も眠れなかった。午前2時にベッドに入ったけれど、怖くて、そしてものすごく疲れていた。遠くでまた爆発音がした。そして今度はまたすぐ近くで。昨晩、お母さんと思い切って部屋を出て台所の窓から外を見てみた。空はただ赤かった。赤くて赤くて、ひたすら真っ赤だった。私たちの美しい国が。どうして彼らはこんなことをするの?」

 テレビからイラクの人たちの生の声を聞くことはなかなかできない。新聞も部外者の目だ。かつニュースで伝えられることは当然各国や各社の操作が入っている。人々はどんな気持ちで何を見ているのか。インターネットから一般市民の目線の情報が伝わってきた。誰も本当の正体を知らないけれど、バクダッド近郊に暮らす29歳の男性サラムがインターネットで日々をつづっている。バグダッドの様子や市民の暮らしに私たちをぐっと近づけてくれる。

 「今日(23日)父と弟が街の様子を見に行った。彼らに言わせると兵器は確かにかなり正確にあたっているらしい。でもミサイルや爆弾が炸裂するときにあたり一帯を潰してしまう。アルサラム宮殿(シャハフ情報相がジャーナリストを連れってった所だ)の近くの家々の窓は全部割れていて、ドアも吹き飛び、一つの家は屋根まで崩れていた。でもこれが二次的被害ってやつで、それならいいんだっけ?」。

 英語だが、URLはhttp://www.dear_raed.blogspot.com

 ブレアやブッシュが言うほど、イラクの人たちはこの戦争によって「解放」されるのを待ち焦がれているのだろうか?サラムはバクダッドの美しい建物が火に包まれるのを映像で見て「むなしくて涙が出た」と書いている。17歳の少女の日記からもこれで一生が終わりかもしれないという気が狂うような恐怖が伝わってくる。新聞の報道でも「ここは自分たちの国だ」というメッセージが多い。「サダムを追放するという話を聞いて喜んだ」というクルド人でさえ、アメリカ攻撃によって伯父を亡くし「サダムが自分たちを攻撃したときには理由があった。自分たちが政権に反乱して立ち上がりイラクの兵士を殺したからだ。けれど自分たちはアメリカに何もしていない。爆撃で死んだ自分のおじさんはとてもいい人だった。誰を傷つけたこともない。アメリカはなぜこんなことをするのだ」と怒りを抑えられずにいた。

 こうしている間にも、安全な水を断たれて人々は死んでいく。人口の6割が頼っている食料援助が入らずに飢えていく。人々は仕事ができず、育てた作物が腐っていく。赤十字も国連事務総長も、イラン南部の都市が「人道的大惨事の一歩手前にある」と警告している。それすら力づくで解決しようとしている米英は、国民が彼らを歓迎することを前提にしている。サラムは白旗をあげてひざまずくイラン兵の映像を見ながら、そうするほうが彼らのためなのはわかっているけれど、何か心の奥の方で苦いものがわきあがると書いている。イラクの国家主義、民族結束はよく知られている。米英はこうした爆撃の後に本当にイラクの人々の心を得ることができるのだろうか。サダムがいなくなっても、自分の足がまひし顔には火傷のあとが残り、大切な子どもを亡くしても、その人は幸せだとにっこり笑うだろうか。それが「少数」なら「成功」なのだろうか。
誰のための「成功」なのか。

 アフガニスタンが復興したとはお世辞にもいえない。道端では殺人、レイプがレポートされている。爆撃はまだ続いている。この後本当に世界は安全になるのか。少なくとも今は、この紛争によって中東は極めて不安定になっている。エジンバラにも武装した警官が数を増した。これは安全なのか、危険の印か。

 ラジオでは英国人ジャーナリストがバクダッドの街に出た時の様子が報道されていた。人々がとにかく暖かく楽しいという。「英国人の自分にどうしてこんなに親切にしてくれるの」と聞くと、その初老の男性は「君たちも独裁者の下で生きているんだろう。我々の国を攻撃することも君にはどうしようにもないに違いない」とにっこり笑ったという。人口6000万人の国で100万人以上が抗議の行進をした後でもそれをまともに考慮しない現英国政権を民主政治を呼ぶのかどうかわからない。ブレアはこれを「リーダーとしてなすべきむずかしい決断」と言った。

 テレビ画面に映されるバクダッド空爆の生中継に私は戸惑う。9.11の映像と重なる。ウム・カッサールの銃撃戦のライブ、発射した爆弾が命中して歓声を上げるアメリカ海兵隊員。イラクの戦車に爆撃して猛烈な煙があがった映像を見ながら「これが成功した爆撃の例です」と言うアナウンサーに吐き気がした。戦車には人間が乗っているのだ。兵士たちの誰一人として死にたくないだろう。自分たちで望んだ戦争ではない。少なくともイラクの人たちにとっては侵略者に対する自己防衛だ。安全な場所に自分の身を置きテレビの画像を見ながら、あの炸裂の中の苦しみを想像できないアナウンサーの人間性が恐ろしかった。爆破された戦車の中にいた人と、その人につながる人々の苦しみを「成功した爆撃」というセリフで引き換えにできるものだろうか。

 戦争になったら数万人の犠牲者が出るのではという記者からの質問を受けて、ペンタゴンはせいぜい一万から一万5千人だと答えた。それだけ殺してもよいという前提だ。9.11で死んだ人間の数は2801人だ、もし数が問題なのだとしたら。イラク市民一万人の命は価値がないのだろうか。水や食料が断たれたり、薬が切れたり病院に行けないなどの間接的犠牲者のことも忘れてはならない。軍事的に圧倒的に有利にありながら、降伏の旗を上げている兵士たちまで惨めに死んでいることも。

 22日青空の下、私が暮らすエジンバラ市の反戦集会に出かけてみた。驚いた。小さな子どもなら自分の意志ではないだろうが、12,3歳の子どもたちがたくさんいた。自分たちで作ったバナーを持ったり、Tシャツにメッセージを書いたりしてあった。8歳くらいの少女が「爆撃を止めよう」というビラを私にくれた。英国では過去1ヶ月、子どもたちが昼に学校を抜けて反戦デモを行う動きがどんどん大きくなっている。阻止しようとする学校もあれば、無断欠席扱いだが意見の表明の自由は認めるという態度の所もある。もちろん遊びで加わる子どももいるだろうが、多くはまじめに考え、この戦争は間違っていると主張する。学校では授業中に今回の戦争をテーマにさまざまな角度から議論をしているらしい。小学2年生の授業でブレアに意見書を書いたところもある。子どもたちの中でデモクラシーとは何かをまともに考えるきっかけになっているに違いない。

 エジンバラのデモではムスリムもカトリックもいた。パキスタン人も中東やアフリカ出身の人たちも東洋系も。パレスチナの旗を持っている人が目立った。英国政府はもっとも肝心な問題に向かっていないという不満が人々の中にある。広場いっぱいに集まった数は数千人。在エジンバラのイラク人、クルド人らもマイクを持って訴えた。イラクに家族が暮らしている。彼らは恐怖に脅えている。電話で毎日泣いている。爆撃を戦争を、このテロをやめて、と。ドラムや笛などの鳴り物と一緒に行進が始まった。いったいどこにいたのだろう、どんどんと人数が膨らんでいった。途中、道を歩いている人たちと会話がある。「この国の兵隊さんが命をかけてるのよ、そんなばかなことしないで応援しないと」「その人たちがこの無用な戦争で犬死にしないうちに戻ってきてもらいましょう」などとやりとりがある。
 「ブッシュ、ブレア、CIA、今日は何人子どもを殺したの?」とラップ調に歌いながら行進する。他にも「ジョージ・ブッシュ、知ってるよ。あんたの父ちゃんも殺人者だったね」「これがデモクラシーってやつらしいよ、デモクラシーってのはこんな感じがするもんだよ、」。
 歌いながら平和に行進は続きアメリカ領事館、スコットランド政府首相官邸などにアピールした。平和的とは言っても主要な道路が封鎖されるので大きな交通妨害ではあった。6歳くらいの少年があどけない口調で「ブッシュ、ブッシュ、テロリスト」と他に合わせて歌っているのを聞きながら、アメリカや英国が将来にわたって支払うコストを軽く見てはならないと思った。

 警察発表では4-5000人のデモだったというが、1.5キロの道路を埋め尽くしていた様子からすると一万人近くはいたのではないだろうか。人口比でいうと東京でなら40万人のスケールとなる。同じ日に英国のあちこちでデモがあり、全体では20万人以上が反戦を訴えて外を歩いたそうだ。ブレアは国民の団結を求める演説をしたが、イラクが英国にとって直接かつ緊急の脅威だという説明に納得していない人たちは多い。しかも査察団長があと何ヶ月か時間があれば自分たちの仕事を完遂できるという見通しを持っていたのに。武力行使の目的は大量破壊兵器を取り除くことだったはずが、いつのまにかサダム追放になっている。いつのまにか「多少、人が死んでも」今の政権が転覆したほうがイラクの人のためにいいという話になっている。首を傾げる人は多いが、英国は野党である保守党が戦争支持で、逆に与党の内部が割れている状態なので、国民は党への投票という形では自分の意見を反映できなくなってしまった。

 今やほぼ半数の国民が戦争支持という数字と、現地から自信たっぷりに繰り返される勝利の報道で、政府は何とかこのまま乗りきりたいという姿勢だ。しかし私が参加したデモでは、人数は以前よりも少ないにせよ人々の意志とエネルギーは衰えていなかった。しかも数日前に外務大臣付きの法律顧問が辞任した。彼女は30年間も政府の顧問をしており、公のコメントはないが、イラクに戦争をしかけることが合法だという立場にくみすことができなかったからとされている。英国にはイスラム教徒が数十万人いるとされる。イラク人や中東出身者も多い。歴史的なつながりも深い。戦争が長引くほどこの行為に疑いを深める人たちが増えるだろう。英国兵士が死んだりケガをすればそれだけ、国民も苦しむだろう。もともとイラクの人たちを憎んでいるわけではないし、とてつもなく脅威であるはずのサダム・フセインも英国に対して何かしたことがあるわけではないのだから。

 最後に一つだけ紹介したい。「体験を通して平和を考える教育者のネットワーク」というものがある。これもインターネットのつながりだ。そこにアメリカ人が爆撃開始前に書きこんだQ&Aの幾つか抜粋する。

  1. Q: 9.11のテロ攻撃とイラクとの間に立証された関係はあるか?
    A: ノー
  2. Q: 湾岸戦争時の推定市民犠牲者数は?
    A: 35000人
  3. Q: 湾岸戦争時にイラクの攻撃によって起きた西側での犠牲者数は?
    A: 0人
  4. Q: 敗退するイラク兵のうち何人が、アメリカの戦車によって生き埋めにされたか? 
    A: 6,000人
  5. Q: 湾岸戦争の後、イラクとクェートに残された劣化ウランの量は?
    A: 40トン
  6. Q: 国連によると、1991年から94年の間のイラク人のガン発生率はどれだけ上昇したか?
    A: 700%
  7. Q: 1991年にアメリカはイラクの軍事力の何割を破壊したと宣言したか?
    A: 80%
  8. Q: イラクが戦争阻止や自己防衛以外の目的で武器を使用する計画を持っていた証拠はあるか?
    A: ノー
  9. Q: イラクは10年前よりも世界平和にとって脅威を与えているか?
    A: ノー
  10. Q: イラクに攻撃した場合にペンタゴンが予測している市民の死亡者は何名か?
    A: 10,000人
  11. Q: そのうち何割が子どもか?
    A: 50% 以上

 まだまだ続く。これも英語だけれどURLは:
 http://www.wilderdom.com/PeaceExperientialEducation.htm

 本当はこのメールでは、英国にいて入ってくる情報を、イラク情勢が気になっているだろう人たちにかいつまんで紹介しようとだけ考えていた。
 けれど、白旗を上げながら頭を吹き飛ばされて死んでいるイラク兵の写真を見た時に、やはりこの戦争は間違っているとはっきり声を上げたいと思った。
日本の報道でも使われているかもしれないが、その写真を掲載した新聞のイメージをたまたまあと数日ウェッブで見ることができる。本物の新聞ほど詳細が見えないので怖くはないと思う。
http://www.scotlandonsunday.com/ 
画面右わきのコラムの一番上をクリックしたら大きくなる。

 「重要だと思うことに対して沈黙する日に、我々の人生は終息に向かう」と言ったのはマーチン・ルーサー・キングだった。

英国エジンバラにて  3月25日 高野孝子

*デモの様子はQuickTimeを使って以下でご覧いただけます。ADSLやcableTV経由でネット接続している必要があります。
rtsp://www.ecoclub.org:554/edin_demo.mp4
*ウェッブでは写真入りで見ていただけます。www.ecoclub.org
イラクのカトリック尼僧による
 ブッシュ大統領とアメリカ国民への手紙

2003年3月14日
平和のための緊急翻訳チーム Translators United for Peace(TUP)より

キリストの愛と平和はあなたとともに

 この手紙は、アメリカ大統領ではなく、一人の人間としてのブッシュ大統領とアメリカ国民のみなさんへ宛てたものです。クリスチャンとして、みなさんは愛と憐れみの心をお持ちのことと思います。明るい未来もなければまともな生活も送れずにいる子どもたち、老人、若者を気の毒にお思いになるでしょう。私たちイラク在住のドミニコ会の修道士・修道女は、イラクの人々とともにその苦しみを分かち合っています。過去23年に2つの悲惨な戦争を経験したイラクは、非常に困難な状況にあります。もし、ブッシュ大統領が新たな武力攻撃を開始すれば、大惨事をもたらします。イラクの人々を被っている危険は、みなさんにも感じていただけるものと思います。だからこそ、世界中で何百もの人々がデモを行い、手紙を書き、ブッシュ大統領に武力攻撃をしないよう圧力をかけようとしているのです。

 ブッシュ大統領は動物の権利を擁護しています。私たちは動物以下でしょうか。大統領は、イラクの人々の人権を守ろうとしているのだと言っています。新しいイラク政権を樹立したいのです。米国民や周辺国の人々に対しては、攻撃の対象は軍部と兵器だけだと言っています。民間人には何の危害も与えないと約束もしています。人々には花をまこうとでもいうのでしょうか。大統領が使おうとしている大量破壊兵器は、文化にも、国土にも歴史にも壊滅的な打撃を与え、老若男女罪もない何千人もの人々を殺すことになるのです。

 イラクにいらしたことのある一部の方はご存じかと思いますが、軍のキャンプは民間の人々の家のすぐ近くにあります。私どもの修道院は2箇所、軍のキャンプの始まるあたりと、キャンプ地の終わる部分にあります。そう考えると、爆弾で死ぬのは兵士でしょうか、一般の人々でしょうか。人々は恐怖と混乱、そしてこの上ない不安の中で生活しています。苦しみのタネは軍による戦争だけではありません。ブッシュ大統領が始めた非人道的な脅しという一般の人々に対して仕掛けた別の戦いからくる異常な心理状態にも苦しめられているのです。私たちは、いつくるかも知れない即死という事態をじっと待たされているのですから。明日の運命をも知れない今、私たちは毎日、今日命があることを神に感謝しています。新たな戦争の悪夢は、いつでも、どこでも、私たちにとりついて離れることはありません。

 神は自由な人生を、貴重な贈り物として私たちにくださいました。ブッシュ大統領は、なぜそれを取り上げ、自由を奪おうとするのでしょうか。小さなこどもたちも、こうした脅威に耐えかね、緊張状態に耐えられず、絶望している今の状態は、とても想像がつかないでしょう。子どもたちが、「いつ戦争になるの」と聞いてくるのです。

 あなたは騙されているのです。そして、私たちはといえば、アメリカのメディアという、最大のうそつきにつかまってしまったのです。ここにいる子どもたち、女性、そして人々は栄養失調と飢餓で死んでいきます。こうした飢餓は非人道的な制裁措置によって引き起こされたのです。制裁措置が原因で亡くなった人は、すでに150万人にのぼります。その大半が女性と子どもです。

 アメリカの若者たちは、この一瞬にも死ぬかもしれないという状況になったことがありますか。もしそんなことになったら、爆発してしまうのではないでしょうか?

 なぜアメリカ人には平和に安全に、繁栄のなかで暮らす権利があるのでしょう。
 アメリカ人の命は、イラクのような他の国の人々の命より価値があるのでしょうか。

 3月15日(土)、大学生たちは互いにさよならと手を振り会って、戦争の準備に散っていきました。勉強どころではありません。学生たちは失望していますし、一番希望から遠いものしか彼らの希望はないのですから、仕方がありません。2日前まで、安全と平和を夢見ることも出来ましたが、暴力と苦しみと恐怖に囲まれている今となっては、もうその言葉の意味も分からなくなってしまいました。

 最後に、私たちの湾岸戦争でのキズはまだ癒えていないことをお伝えしたいと思います。もっとひどいであろう新たな戦争に、どうやって耐えればいいのでしょう。

 この戦争が直接的にもたらす結果も悲惨なものですが、後に残す災禍も非常に悲惨です。罪のない人々が空爆の犠牲になるだけでなく、汚染された飲料水や環境汚染、劣化ウラン、医薬品や医療品の不足、電力の不足に苦しむのもまた、こうした罪のない人々です。

 慈悲の心と人類愛を持っておられるすべての人々が、祈りの場で、教室で、そして神の言葉を伝えるすべての場で、イラクの人々の苦しみと不安のために祈ってくださいますように。イラクの人々の苦しみの現実を、人々に伝えてください。イラクの子どもたちの叫びに耳を傾け、戦争阻止への努力をいままで以上になさってください。そうすることで、イラクの子どもたちの激しい苦痛をとりさり、夜中眠っているさなかに子どもたちがあげる「ほら、爆弾を落としにきた、殺されちゃう」という叫びを沈めることができるのです。

 こんなことが起こるのは、公平なことでしょうか。巨大な黒い金の海の上に浮いているのは、私たちの犯した犯罪でしょうか。私たちの死以外の代価はなんなのでしょう。なぜ、私たちは明るい未来やふつうの生活を夢見てはいけないのでしょう。

 ぜひとも、戦争がおこらないように祈ってください。愛と祈りは奇跡を起こすこともあるでしょう。神の祝福がみなさんの上にありますように

イラク在住ドミニコ修道会
(翻訳 佐光紀子)

マイケル・ムーアからブッシュへの公開書簡
Michael Moore
http://www.michaelmoore.com/
Monday, March 17, 2003

ホワイトハウス在住
ブッシュ知事殿

 あんたの言う「真実の瞬間」、「フランスや世界中の国が手の内を明かさなければならない日」とは今日のことだ。ようやくこの日が来たと聞いて、嬉しいよ。だって、言わせてもらうが、あんたのウソと黙認根性を440日も耐え忍んで、もうこれ以上我慢できるかどうか分らなかったんだから。それで、今日こそが「真実の日」と聞いて喜んでいる。というのも、あんたに伝えたい真実というものがいくつかあるからね。

  1. アメリカには戦争したがっている人間はたった一人として(トークショーのキチガイやFox News を除いて)いないんだ。これについては俺を信じてくれよ。
    ホワイトハウスから足を踏み出し、アメリカのどこの通りでも歩いてみて、イラク人を殺したいと「情熱的に」思っている人間を5人探してごらん。絶対見つからないからな。何故って? だって、ここに来て俺たちを殺したイラク人は一人もいないからさ。そうするぞ、と脅したイラク人さえ一人としていないんだ。な、これが普通のアメリカ人の考え方なんだよ。もし確かに誰それが俺たちの生活に危害を及ぼすということが考えられなければ、ま、信じられないかもしれないが、俺たちはそいつを殺さないんだぜ。おかしいだろうが。

  2. 大多数のアメリカ人は、つまり、あんたに投票しなかった連中さ、あんたの「大量混乱兵器(翻訳コメント:大量「破壊」兵器のもじり)には騙されていない。俺たちは自分たちの毎日の暮らしに関わる本当の問題が何かということをちゃんと知っているんだよ。それは「I」に始まり「Q」で終わる(Iraq のこと)問題とは全然関係ないぜ。俺たちを脅かしているのは、こういうことだよ、な、つまりあんたが役についてから、250万件もの仕事がなくなったんだ、株式市場は残酷な冗談になっちまったし、誰一人として自分の退職金の貯金が残っているかどうかも分らない、ガソリン代は約2倍に上がったし、リストはいくらでも続くのさ。イラクに爆弾落としてこういう状態がなくなるわけはないだろうが。物事を改善するためにいなくなる必要があるのは、実はあんただけなのさ。

  3. 先週ビル・マーハーが言ってたけどさ、サダム・フセインとの人気コンテストに負けるために一体どれだけ頑張らなければならないわけだい。世界全部があんたに反対しているんだよ、ブッシュさん。あんたと同じアメリカ国民たちさえもその仲間なんだよ。

  4. ローマ法王がこの戦争は間違っているって、これは「罪」だって言ってただろうが。法王様だぜ!それどころか、ディキシー・チックだってあんたに反対しているって表明したくらいじゃないか。あんたはたった一人きりでこの戦争しているってことに気がつくまでに、いったいどれだけ物事が悪化しなければいけないんだい。ま、もちろん、あんたは個人的に戦場で戦う必要はないわけだ。あんたがAWOL(とんづら)やっている間に代わりに貧乏人がベトナムに送りこまれた時とおんなじことさね。

  5. 議会の535人の議員のうち、軍隊に入隊した息子や娘を持っている議員はたった一人(南ダコタ州のジョンソン上院議員)だけだ。あんたが本当にアメリカのために立ち上がろうと思うなら、あんたの双子の娘達を今すぐクウェートに送りこみ、化学兵器用スーツを着せたらどうだい。それから、軍隊に入れる年齢の子供達を持つ議員さんたち全員が、この戦争のために自分たちの子供たちを犠牲にするかどうか、見せてもらおうじゃないか。え、何だって? そんなことできないって? なるほど、そうだろうさ、そのとおり。俺たちだって、そんなことできないわけだよ。

  6. おしまいに、な、俺たちはフランスが大好きなんだ。そりゃ、王族の間違いなんかもいくらかあっただろう。もちろん、中にはやたらと胡散臭い奴らもいるさ。だけど、忘れちゃいけないぜ、フランス人がいなかったら今やアメリカとして知られる国は存在しなかったんだぜ。彼らの革命戦争勝利のおかげで俺たちの勝利があったということも忘れちゃいけない。トマス・ジェファソンとか、ベン・フランクリンなど、俺たちの国の最も偉大な思想家たちや国の創始者たちが、何年もパリに滞在して独立宣言や俺たちの憲法につながる概念に磨きをかけたんだということも忘れるなよ。自由の女神を俺たちに贈ってくれたのもフランスだし、シボレーの車を作ったのもフランス人だったし、映画を発明したのもフランス人の双子の兄弟だったってことも忘れるな。今、彼らは本物の友達だけができることをしているのさ。それはあんたについての真実をまっすぐに、ごまかしなく語るということだ。フランス人にしょんべん引っ掛けるのはやめて、的を射たあいつらに礼を言ったらどうなんだ、まったく。あんたはね、ほんとに、職につく前にもうちょっと旅行してみるべきだったんだよ、たった一度でもいいから。 あんたの世界に対する無知さ加減は、あんたが単に馬鹿にみえる原因だけじゃなくって、あんたを逃げ道のない立場に追い込んでしまったのさ。

 ま、元気出せ、好い知らせがある。この戦争をやるんだったら、すぐに終わるだろうさ。だって、サダム・フセインを守るために命を投げ出すイラク人はそれほどいないだろう。この戦争に「勝った」後は、誰でも勝った奴に味方するわけだから人気がぐっと上がるだろうさ。それに、誰だってちょっとした悪者退治は見物だしね。特に第三世界国の悪者だったら、特にそうだろう。だから来年の選挙までずっとこの勝利を保つ努力をできるだけすることだね。もちろん、それまで先は長いから、経済がもっとずっと落ち込んで便所に流されていく姿を見ながら、やたらと議論が延々と続くだろう。

 だけど、待てよ。ちょうど選挙の2、3日前にオサマ・ビン・ラディンが見つかるかもしれないぞ。ね、こういう考え方をはじめなくっちゃ。希望を持て。イラク人は俺たちの石油を持ってるんだから、奴らを殺せ。

[訳注:アメリカ独特のブラックユーモアの皮肉に注意。不法に大統領の座を得たブッシュに「大統領」というタイトルを与えず、わざとブッシュを「知事」と呼んでいる。ブッシュ大統領がアピールしている知識レベルの言葉をわざわざ使っている。ディキシー・チックはテキサス出身のカントリーミュージックの人気女性グループ。最近ロンドンのコンサートで「ブッシュ大統領と同じテキサス出身であることが本当に恥ずかしい」と発言した。議会で「ディキシー・チックのボイコット」が可決されたり、全米に何千とあるラジオ局の90パーセント以上を独占しているClear Channel というテキサスに本拠を持つラジオ放送会社が全国的に彼女たちの歌のボイコットを命じた。](翻訳:宮前ゆかり)

A Letter from Michael Moore to George W. Bush on the Eve of War
by Michael Moore
Monday, March 17, 2003

アメリカ政府は血に飢えた野獣
ハロルド・ピンター
2002年12月11日 (ディリー・テレグラフ)
イギリスの著名な劇作家のハロルド・ピンターがトリノ大学で名誉学位を授与された際のスピーチです。
哲学クロニクル 第342号より

 今年わたしはガンの大手術をうけた。手術とその余波は悪夢のようなものだった。深く、再現もなく続く闇の海を、浮いたり沈んだりしながら泳いでいるような気持ちだった。でもわたしはなんとか溺れることもなかった。いま、生きていて、うれしいと思う。

 しかし自分だけの悪夢から醒めた後で、もっとたちの悪い世界的な悪夢の世界に入りこんだような気分だ。アメリカのヒステリー、無知、傲慢さ、愚劣さ、そして好戦性の悪夢だ。世界でもっとも強力な国が、世界の他の諸国に向けて、戦争をしかけているようなものである。

 ブッシュ大統領は、「われわれの側につかない者は、われわれに敵対するのだ」と語っている。「世界で最悪の武器が、世界で最悪の指導者たちの手のうちにあるのを許すことはできない」ともいう。これは正しいが、まあ、鏡をみてごらんよ。それは君じゃないか。

 アメリカは「大量破壊兵器」の先進的なシステムの開発を進めているところであり、好きなところでこの兵器を使うつもりだ。世界の他の国のすべての大量破壊兵器を集めても、アメリカにはかなわないのだ。アメリカは生物兵器と化学兵器に関する国際条約に参加を拒み、自国の施設の検査を拒否している。公的な声明と自国の行動の背後にある偽善は、もうほとんどジョークに近い。

 アメリカはニューヨークでの3000名の死者が、唯一の重要な意味をもつ死であると考えている。死んだのがアメリカ人だからだ。その他の死者は現実のものではなく、抽象的で、帰結を生まないものとされている。

 アフガニスタンでの3000名の死が口にされたことはない。アメリカとイギリスの制裁により、重要な医薬品を奪われて死んだ数十万人のイラクの子供たちのことが口にされることもない。

 アメリカが湾岸戦争で使った劣化ウラン弾の影響について語られることもない。イラクでは放射線レベルは驚くほど高い。脳も、目も、生殖器もない赤子たちが生まれている。耳、口、直腸をもっている赤子たちも、これからの器官はただ血を流すだけなのである。

 ベトナム、ラオス、カンボジアでの数百万人の死者は、もはや思い出されることもない。世界の不安の中心的な要因であるパレスチナ人民の絶望的な苦境について語られることもほとんどないのである。

 しかしこれは現在の大きな判断ミスであり、歴史の重要な誤読である。人々は決して忘れない。仲間の死を忘れることはないし、拷問や四肢の切断を忘れることもない。正義に反する行為を忘れることはないし、抑圧を忘れることはない。強国によるテロを忘れることはない。人々は忘れないだけではない。反撃するのだ。

 ニューヨークでの残虐なテロは予測可能であったし、不可避でもあった。世界のあらゆる場所で、アメリカが長年にわたって遂行したきた国家的なテロリズムにたいする報復の行為だったのである。

 イギリスでは国民はテロが起こる可能性があることに「警戒する」よう警告されている。しかしこの表現はそもそもおかしくないか。住民がテロにどうやって「警戒」するというのか。毒ガスを吸い込まないように、スカーフで口をふさいでいろというのか。

 しかしテロリストによる攻撃が起こる可能性はとても高い。わが国の首相がアメリカにあさまくし、恥ずかしい形で従属しているために、テロは不可避なのである。つい最近も、ロンドンの地下鉄での毒ガス攻撃が危うく回避されたばかりである。

 しかしこうした攻撃はいずれ実際に起こるだろう。毎日数千人の子供たちが、地下鉄で学校に通っている。毒ガス攻撃が行われて、子供たちが死んだら、その責任のすべてはわが国の首相が負うものである。いうまでもないが、首相は地下鉄で移動などしないのだ。

 イラクにたいする戦争が計画されているが、これは数千人の市民を、独裁者の手から救うと称して、十分な準備の後に殺害する行為に他ならない。

 アメリカとイギリスが進んでいる道は、世界中で暴力のエスカレーションを生み出し、最終的には破滅をもたらす道である。そしてアメリカがイラク攻撃に失敗するのは、明白なことである。

 アメリカがイラクを攻撃するのは、イラクの石油をコントロールしたいからだけではない。アメリカ政府はいまや、血に飢えた野獣になっているからだ。アメリカ政府には爆弾という語彙しかないのである。ご存じのように、多くのアメリカ人はいま、自国の政府の姿勢に怯えているが、手の施しようがないようにみえる。

 ヨーロッパがアメリカの権力に挑戦し、抵抗する連帯力、知性、勇気、そして意志をもたない限り、ヨーロッパもアレクサンドル・ゲルツェンの言葉どおりになるだろう。

「われわれは医者ではない。病そのものなのだ。」

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“NO WAR YES PEACE”は今回のイラク戦争に反対するために立ち上げたキタミダイスケの個人サイトです。
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